子どもと絵本を楽しむために
Fun With Child

ゆっくりと絵本の世界へ

1歳から2歳頃

絵本は、ひたすら楽しみのために

 “あかちゃんに絵本を読んであげましょう”と、いろいろな機会にいわれるようになりました。でも決して焦ることはありません。機嫌の良いときに、興味がありそうなものから、少しずつ見せてあげましょう。絵本は本来、子どもにとっても親にとっても、楽しみのためのものなのですから。  この時期、まだ絵本に興味を示さないからといって、何も心配することはありません。自由に動けるようになったのがうれしくて絵本どころじゃない、そんなあかちゃんだっているはずです。

 絵本を読んで、あかちゃんがキャッキャと笑って喜んだりしたら、読み手も幸せを感じますね。でも、ときには、せっかく読んでいるのに途中でどこかに行ってしまったり、勝手にどんどんページをめくろうとしたり…といった、予想外のこともあるでしょう。この頃は、一冊の絵本をひとつの「お話」として理解するのは、まだ難しいことが多いようです。そこでお奨めなのは、幸せそうな動物の親子がいっぱいの『ママだいすき』や、様々な乗り物が登場する『のりものいっぱい』のような、どのページから読んでも楽しさが伝わってくる絵本です。お気に入りのページだけを見ていても、また、ページを逆戻りしても構いません。“絵本を開くと楽しいことがはじまる”、あかちゃんがそう感じてくれたら、それで充分です。

まど・みちお文/ましませつこ絵 『ママ だいすき』より

大好きな人に読んでもらう喜び

 子どもにとって、絵本を読んでもらうことは、二重の喜びです。ひとつは、絵本そのものの楽しさ。もうひとつは、大好きなお父さんやお母さんの膝を独り占めして読んでもらううれしさです。どうぞ、くつろいだ雰囲気で、お互いの体温を感じながら、お子さんに絵本を読んであげてください。どんなに上手な声優さんも、お父さんやお母さんの声にはかないません。子どもたちは、テレビやCDでは得られないものを、その肉声から受け取っているのです。

 その典型的な絵本が『くっついた』です。金魚と金魚、あひるとあひるなどが、ページをめくると、「くっついた」。最後はあかちゃんとお母さん、そしてお父さんも「くっついた」となって、きっと親子で幸せいっぱいの気持ちになるでしょう。この絵本はお父さんも積極的に読んでみたくなるようです。

 また、この時期は、見るもの聞くものすべてが珍しくて、興味の対象も日々変わってゆくような、日進月歩の時代ですね。ですから、喜ぶと思って買ったのに見向きもしなくて…、という絵本も、何カ月かたつとまったく違う反応が返ってくることも多いものです。一度読んでみて興味がなさそうでも、「この子は、こういうのは嫌いなのね」と決めつけずに、しばらくたってからまた読んでみるのもいいかもしれません。

三浦太郎作『くっついた』より